健康長寿をめざして ~始めましょう、生活習慣の見直しを~

私たち人間は生まれて死ぬまで、全く病気にかからない人はいないはずです。
病気を発症するには、遺伝によるもの、環境、つまり何らかの病原体や有害物質にさらされて起こるものと、生活習慣が原因で起こるものがあります。
今回は主に生活習慣病について、お話を致します。

以前は成人病と言われていた。

1955年ころから厚生労働省が働き盛りの40歳から60歳くらいの人々に発症しやすい病気として、脳卒中、心臓病、糖尿病、痛風などを成人病として定義してきました。
しかし、このような病気は子供のころからの生活習慣、つまり、どのような生活をしてきたか、運動や食生活はどうだったかということがかなりかかわってくるとわかり、1996年から生活習慣のなせる病気、生活習慣病と呼ばれるようになりました。

血管の老化、すなわち動脈硬化がこわい!

動脈硬化とは、血管のなかで心臓から血液を体のすみずみまで送り出す動脈という血管の壁が厚くなったり、硬くなったりしてしなやかさが失われ、血管の一番内側にお粥のようなもの(コレステロールを中心とした脂肪成分など)が沈着するものであり、血管の内側が結果として狭くなり脳梗塞や狭心症、心筋梗塞などを発症するものです。
そして何とこの動脈の変化はゼロ歳のときから始まるのです。
ベトナム戦争や朝鮮戦争で若くして亡くなった25歳未満の米兵を解剖して血管を調べた結果、約6%にすでに動脈硬化が認められたという報告もあります。

ではどうしたらよいのだろう?

はじめのうちは動脈硬化はひっそりこっそりと進行します。そしてなかなか症状が現れません。
年取って血圧が高くなってきた、食べ過ぎや不規則な生活でストレスがかさみ心臓に負荷がかかってきたとしてもはじめのうちは、日常生活に特に支障をきたさないため放っておく人が多いようです。そしてそれらはある日突然心筋梗塞や脳卒中として正体を現します。
そうなる前に健診を受けたり、あるいは、少しでも血圧が高いとか尿糖がでるとかたまに胸痛があるなどあったら、信頼のおけるかかりつけ医を受診して、動脈硬化を進行させる危険因子を少しでも取り除くことが大切です。動悸、胸痛の場合は自己判断せずに医療機関を受診してください。
そして動脈硬化の進展予防のためにまず大切なのは適度な運動(軽く汗ばむ程度)、バランスのとれた食事(食べ過ぎない)、十分な睡眠、塩分を控える、たばこは吸わない、アルコールはほどほどに、そしてなによりもくよくよしない、できる限り笑顔で過ごすことです。
心身の調和を保つのです。もちろん必要に応じて動脈硬化の進行を少しでも抑制するために薬が必要になることもあります。
戦前と違って青魚の摂取が減り、動物性の蛋白質と脂肪が日本人の食生活に大きく浸透してきました。すべてが悪いわけではありませんがほどほどに。
現在青魚からとれた、動脈硬化の進展を抑える薬も開発されています。

さあ、やってみよう!!具体的に。

以下はご高齢の方に主としてお話しています!
皆さまはフレイル、サルコペニアという言葉をご存知でしょうか?いえいえ、これは知らなくても、歳取って歩く速度が遅くなり、ゆっくりしか歩けない、さっさと歩くと転びそうだとか、ペットボトルのキャップがうまくあけられないなどは経験してきていると思います。
昔は筋肉もりもりだったのに、今はやせて歩くのもおぼつかないとか。フレイルとはひとことで年取って虚弱になった状態、さらにサルコペニアとは加齢で筋肉が衰えた状態でフレイルにつながります。
心臓や肺の病気、抑うつ状態、貧血などがより高い割合で生じてきます。
では、まず、筋肉を減少させないために、蛋白質、カルシウムなどをバランスよく摂取しましょう。お豆腐、肉、青魚、牛乳、チーズなどがお勧めです。しかし、食べ過ぎはよくありません。
さらに適度な運動が心臓や肺の機能を良くして、骨を丈夫にし、血流を改善させ、食欲増進にもつながります。
勝負にこだわらないグランドゴルフなどはお勧めでしょう。適度に水分を補給しながら、息をとめないでできる運動を力まずに行うことです。ダンベルを持ち上げるなどはあまりお勧めできません。食前と、食直後の運動は避けましょう。フレイルは、まだ改善の余地がある状態なのです。
そしてしっかり噛むことです。入れ歯でもしっかり噛めれば脳血流アップ、誤嚥予防にもつながります。
きんさん、ぎんさんは100歳をこえて日本中から注目をあびるようになったとたん、筋力改善トレーニングを開始しテレビに出ることで非常に若返り、一時的にフレイルの状態を脱することができました。

終わりに

楽しいことを考え、ご近所さんと話すのもよいです。外にでて、引き込もらないように、薬は必要であっても頼りすぎず、お花を育てるとか、ペットを飼うとかでも、とにかく生きがいをふやしましょう。生物学的寿命でなく、健康寿命をのばしたいものです。何かを始めるのに、遅すぎることはありません。

永井循環器内科・生活習慣病・心臓クリニック
院長 永井淳子